実装ステップ
英国金融行為規制機構(FCA)は2026年9月、上場企業に対するIFRSベースの気候・サステナビリティ報告の強制義務化を見送り、「コンプライ・オア・エクスプレイン(Comply-or-Explain)」方式を採用する最終規則を確定した。適用開始は2027年1月以降の会計年度(初回開示は2028年)。
企業が取るべき実装ステップ
ステップ1: UK SRS(英国サステナビリティ報告基準)の把握
対象基準は:
- UK SRS S1(全般的サステナビリティ関連財務情報の開示)
- UK SRS S2(気候関連財務情報の開示)
これらはIFRS S1/S2(ISSB)を英国の文脈に適合させたものである。
ステップ2: 適合・非適合の判断
自社の状況(業種・規模・気候リスクの重要性)を評価し:
- 適合(Comply) → UK SRS S1/S2に基づいた開示を行う
- 非適合(Explain) → 「なぜ適合しないか」の説明を開示。説明の品質・合理性も市場に評価される
ステップ3: 適合を選択する場合の実装
- 重要性評価(Materiality Assessment)の実施
- 気候関連リスク・機会の特定(短期・中期・長期)
- シナリオ分析の設計(1.5℃・2℃・4℃等)
- 指標・目標の設定と開示
- ガバナンス・戦略・リスク管理・指標のTCFD型構造で開示文書を作成
ステップ4: 開示文書の作成と取締役会承認
UK SRS適合開示は取締役会レベルの承認・署名が必要になる予定。ESGチームだけでなくCFO・取締役会を巻き込んだガバナンス構築が必要。
使うツール・標準
- UK SRS S1/S2(FCA最終規則)
- ISSB S1/S2(IFRS財団、UK SRSの母体)
- TCFD推奨開示フレームワーク(事実上の前提)
- シナリオ分析ツール: NGFS Climate Scenarios、IEAシナリオ
成功のポイント
- 「Explain」を選ぶにも質の高い説明が必要 — 規制対応を回避しても、機関投資家や格付機関は開示の質を評価する
- ISSBとの整合性を意識する — 英国がISSB準拠の基準を選んだことで、日本・EUとの開示フォーマット整合が進む可能性が高い
- 2026年中に体制整備を始める — 2027年度から適用のため、今から社内体制・データ収集を始めないと間に合わない
日本企業への適用
日本のISSBJ基準(ISSB S1/S2の国内版)と英国UK SRSは同じISSBを母体とするため、英国上場企業とのビジネスや英国機関投資家を持つ日本企業は両規制の整合性を確認しておく必要がある。英国法人・英国上場子会社を持つ日系企業は2027年1月以降の会計年度から実質的な準備が必要。コンプライ・オア・エクスプレインの判断は取締役会レベルで行う。
